アヤメの花

 3年ほど前でしょうか。畑の片隅に突如アヤメが出現しました。どこかから種が飛んできたのでしょうか。そのアヤメを掘り出して、野菜づくりに邪魔にならず、かと言って草に埋もれにくい所に移植しました。去年は細々と花を咲かせていましたが、今年は一気に群れ化しました。

 アヤメの花はとても不思議な形をしています。模様がついて垂れ下がっている花びらが外花被と呼ばれる花弁でこれが3枚あり、そそり立っている3枚の花びらは内花被と呼ばれる花弁です。その中間にやはり3枚の花びらのようなものがありますが、これはなんと雌しべの花柱だそうです。3枚に分かれていますが元の部分は一体になっているんだそうです。そのめしべの裏側に雄しべがあります。

花柱の裏側。花柱の先端が花頭、花柱に覆われるように雄しべがある。

 随分と凝ったつくりですよね。アヤメの花は横から見ても上から見ても独特の存在感と美しさがあります。畑に生える植物は十把一絡げで「雑草」と呼ばれてしまいますが、アヤメを雑草と呼ぶのは少々気が引ける。同じ植物なのに勝手なものです。

何の花でしょう?

この写真の花、何の花でしょうか?

ヒント
①野菜です。
②スーパーには必ずあります。
③焼き鳥屋でもおなじみです。
④蕎麦屋でもおなじみです。
⑤鍋料理には欠かせません。

 こんなにヒントがなくてもわかりますよね。正解は長ネギです。いわゆるネギ坊主です。小さな花の集合体で、一つの花を取り出してみるとこんな形になっています。

 さてこのネギという植物、従来の形態的な分類方法ではユリ科の植物とされていましたが、DNA解析による新しい分類法(APG体系)ではヒガンバナ科ネギ亜科に分類されています。タマネギ、ニンニク、ラッキョウなどもみな同じ仲間です。

 まあ小難しいことはさておき、このネギ坊主ですが、実は食べられます。花が開ききる前のつぼみ状態のものを天ぷらにすると結構おいしく、酒の肴にはピッタリです。

 冬の間、鍋の必需品として食卓を賑わせた長ネギも、4月ごろになるとトウ立ちしてネギ坊主ができてしまいます。そうなるともう固くてネギとしては食べられません。家庭菜園でネギを作っている方、もしネギ坊主ができてしまったら早めにつぼみを摘んで天ぷらで食してみてください。珍味ですよ。

 ネギ坊主を放っておけば当然種ができます。最近はF1品種が多いので要注意ですが、その種を蒔けば当然芽が出ます。また、ネギ坊主をちょん切ってしまったネギをそのままさらに放置しておくと、やがて分けつして再生します。多くの農家はネギ坊主を切り取った後、新たな場所に移植して再生産しています。我が農園ももちろんそうして再利用しています。

クロハネシロヒゲナガ

 畑で野菜の写真を撮っていたら、やたらと髭の長い変な虫を見つけました。とりあえず写真を撮って、あとで調べてみると、クロハネシロヒゲナガという昆虫だとわかりました。特段珍しい虫でもなく、結構あちこちで見かける虫のようです。その気になって探してみると、我が農場にもかなりいることがわかりましたが、今まで全然気づきませんでした。

 チョウ目(鱗翅目)ヒゲナガガ科の一種だそうです。ヒゲナガ蛾、つまり蛾の一種なんですね。もっともこのクロハネシロヒゲナガは最後の蛾の部分が省略されています。命名するときに付け忘れたのか、それともガガと連なると言いにくい、あるいは発音上美しくない、等々の理由があったのか、よくわかりません。

 写真で見たとおり髭が長いので、飛翔にはかなり制約を受けます。写真は草に止まっている時のものですが、飛んでいるときもほぼこれと同じ体勢で、体が立った状態でふわりふわりと飛んでいます。なんとも不思議な蛾です。

 そのくせ、なかなかじっとしていません。機敏に動き回る訳ではないのですが、小さい上に常にフワフワヒラヒラしているので、被写体としてはかなりの難物です。

 一見邪魔そうに見えるこの長い髭を、行動の制約を受けるというリスクをおかしてまで身につけたのも何か深い訳があるのでしょう。この髭、メスは短くてオスは長いことから、一説によるとメスのホルモンを嗅ぎ分けるために長くなったのではないかとのこと。進化の動機はやはり生殖にあるのですね。

ダイコンの花

人知れず
忘れられた茎に咲き
人知れず
こぼれ散り
細かな白い
だいこんの花(久弥)

 1970年代に放映されていたドラマ「だいこんの花」のオープニングに朗読される森繁久彌の詩です。ドラマの内容はよく覚えていませんが、ダイコンの花を見るといつもこの詩が蘇ります。

 畑の片隅で冬に掘り残されて放置されたダイコンが、いつしか花を咲かせている。「人知れず忘れられた」というのはそんな情景を表しているのでしょう。

 なんとなく地味で目立たない印象がありますが、まとまって咲いていると、かなりの存在感を示します。ダイコンはアブラナ科ダイコン属の植物ですので、菜の花の遠い親戚といったところでしょうか。ただ一般的な黄色い菜の花に比べると確かにどこか控えめです。

 遠目には真っ白に見えるその花も、近づいて見ると花びらの縁が薄っすらと紫がかっていて、上品な美しさを醸し出しています。小さなモンシロチョウのようにも見えますね。ダイコンの種類によって花びらの形や色が微妙に違います。

 ダイコンは食卓ではおなじみの根菜ですが、その葉も栄養豊富な緑菜です。でもお店で売られているダイコンには通常は葉が付いていません。もったいないですね。直売所などで葉付きダイコンを見かけたらラッキー。ぜひ買ってみてください。葉の部分はすぐに切り離して調理するのが秘訣です。

ナガミヒナゲシ――ポピーなの? ヒナゲシなの?

 4月から5月にかけて、よく見かけるのが写真のようなオレンジ色のポピーです。

 と言ったそばからなんですが、このポピーという名称はかなり曖昧な呼び方で、ネットで調べると、ポピーはケシ科の植物の総称とあったり、ケシ科植物の一種とあったり、ヒナゲシのことと説明していたり、結構まちまちです。断言はできませんが、調べた限りでは英語でケシ科植物全般を指す言葉と考えてよさそうです。

 では今取り上げているこのポピーの正式名は何かというと、ナガミヒナゲシといいます。ケシ科ケシ属の種名がナガミヒナゲシということですね。ちなみに普通のヒナゲシはケシ科ケシ属の種名がヒナゲシです。まあ親戚みたいなものでしょう。

 ヒナゲシというとオッカの上で咲いているものとばかり思っていましたが、このナガミヒナゲシは道路端のコンクリの隙間から生えていることもしばしば。それだけ生命力が強いんですね。もちろん畑にもよく生えてきます。

 タンポポの葉を小さくしたようなものが生えているなと思っていると、そこから1本の細い茎がニョキニョキと伸びていき、その先端に小さなラグビーボールのような形の蕾が付きます。蕾は下を向いていて、まるでうなだれているよう。ところが花が咲くときはシャキッと天に向かいます。

 花びらは4枚といわれますが、5枚のものや6枚のものも結構多く見かけます。変幻自在なのでしょうか。この花弁は手で触れるとすぐに落ちてしまいます。花が終わると細長い実をつけます。だからナガミヒナゲシか。そのまんまでした。

 実の中には1000粒を超える種が入っているそうで、これが散らばるのですから繁殖力は半端ではありません。危険外来種だから駆除すべきだという声もよく聞きますが、この可憐な花を見るとつい気も緩んでしまいますね。

 ところでケシというと思い浮かべるのがアヘン。ただしヒナゲシやナガミヒナゲシからはアヘンは取れないそうなので変な気は起こさないように。ただ、樹液にはかぶれる成分が含まれているそうですので、油断は禁物です。