カエデの花と春の雪

今年の桜は川越近辺では3月20日ごろに開花しました。異例の早さです。その後一気に寒くなったので、4月2日現在でもまだほぼ満開状態を保っています。寒さと言えば驚いたのが3月29日の雪。今年は異常ともいえる暖冬だったので、3月中旬ごろはこのまま初夏に突入かと思ったくらいでしたが、さすがに近頃の気候は一筋縄ではいきませんね。

桜の花が華々しく咲き乱れるころ、ひっそりと人目をはばかるかのように咲いているのがカエデの花です。カエデは秋には紅葉の主役として人々の視線を集めますが、春にひそかに開いているその花に気づく人はめったにいないのではないでしょうか。とても小さな花で、もちろん種も付けます。種は風に運ばれて辿り着いた先で、運がよければ芽吹いて育ちます。都会ではなかなか難しいでしょうが。

この日、朝から降り始めた雪は昼ごろには我が家の庭も真っ白に覆われるほど積もりましたが、そこは春の淡雪、数時間で溶けてしまいました。何とも儚い雪景色でしたが、新型コロナウイルスの影響で重苦しい雰囲気が漂う中、わずかばかりの憩いのひと時ではありました。

以前も書いたことがありますが、我が農園には雉が生息しています。雉は草むらに巣を作るので、草むらがないところには住み着きません。その点我が農園は安住の地と言えるでしょう。

写真はオスです。派手な色合いで、しかもけたたましい鳴き声を上げるので、すぐに見つけることができます。オスは自分の縄張りに定住していて、メスはオスの縄張りを渡り歩くのだそうです。雉の寿命は10年以上あるようなので、以前掲載した(2016年5月)写真のオスと同じ個体かもしれません。メスは全体が茶色であまり目立ちません。4月から7月にかけて卵を産んで子育てをします。我が農園でもその時期、メスの親子をよく見かけます。

雉は野菜の若芽をつつくので農園にとってはあまりありがたい存在とは言えませんが、カラスやヒヨドリ、ムクドリなどに比べて個体数が圧倒的に少ないのでさほどの影響はありません。畑の中を悠然と歩きまわっている雉を見かけるとなぜか心が和みます。しかも国鳥です。なんとなく有難味すら感じます。同じ鳥でもカラスとは大違いです。

雉は鳥でありながらニワトリと同じで大空をはばたいて飛ぶことができません。地上を歩き回る(時に走り回る)鳥です。でも全然飛べないわけではありません。天敵に襲われたり驚いた時には低空飛行で100メートルぐらい飛びます。近くで見るとなかなかの迫力です。一度飛んでいる姿を撮影したいと思っているのですが、なかなかタイミングよくそういう場面に出くわしません。やはり動物カメラマンにはかないませんね。

春到来

今年の冬は例年になく暖かで、厳しい寒さだった日は数えるほどでした。いつもだとこの時期、朝には霜が降りることもしばしばですが、今年はもう完全に春の装いです。以前にも書いたことがありますが、この時期に畑を彩っているのはオオイヌノフグリとホトケノザです。オオイヌノフグリの花は青、ホトケノザの花は紫。いずれもとても小さな花ですが、密集して生息しているので、あたかも絨毯を敷き詰めたかのように見えます。

写真はホトケノザの花のアップです。とても小さな花ですが、かなり複雑な形をしていますね。ホトケノザという名は葉の形が仏像の台座に似ていることからつけられた名だそうです。春の七草にあるホトケノザは別の植物で、コオニタビラコと言います。キク科の植物で黄色い花を付けます。こちらはシソ科の植物です。確かにこのホトケノザの葉は食べてもおいしそうには見えません。食べたことはありませんが。

もうそろそろ夏野菜の種まきやらジャガイモの種芋まきやら、本格的な農作業が始まります。過ぎてしまえば冬もあっという間でした。

越冬

今年の冬は記録的な暖冬が続いていますが、それでも寒い日の朝晩は氷点下になります。植物にとって厳しい季節であることに変わりはありません。我が農園ではこの時期葉物野菜をほとんど作っていないので、全体的に赤茶けた色で覆われているのですが、そんな中で緑を維持しているのは雑草です。

この時期の雑草はほとんどが地べたを這うようにひっそりと生き長らえています。写真は昨年9月の「野草の花(1)」に取り上げたメマツヨイグサです。同じ植物とは思えませんよね。このようなロゼット状態で越冬して、暖かくなってくるとニョキニョキと上方に伸び始め、夏には背丈2メートルにも及ぶ大きな植物に変貌します。地上からはわかりませんが、すでに地下にかなり太い頑丈な根を成長させています。

雑草はよく「逞しさ」の代名詞として使われますが、これらのロゼット状の雑草は本当に丈夫です。少々踏んづけたくらいでは枯れません。今は目立たないのでついつい油断してしまうのですが、退治するなら冬の間が一番です。トラクターでうなってしまうのがいいのですが、これから空っ風の季節を迎えます。柔らかい土をむき出しにしてしまうと、春一番が吹くころに埃が舞い上げられて、一面茶色い濃霧で覆われたような状態になってしまいます。農場のあるところは川越でも郊外ですが、それでも住宅密集地に隣接しています。砂嵐は避けなければなりませんので、タイミングを見計らう必要があります。夏も冬も畑にとって雑草は本当に厄介な存在です。

苺とマナー

我が農園には、物置代わりに使っている小さなビニールハウスがあります。その片隅に、去年イチゴの苗を1本だけ植えました。その後ほっぽらかしだったのですが、数株に増えて、暖冬のせいか早くも花が咲きました。イチゴ農家のようにいいイチゴを作ろうとするとなかなか手間がかかりますが、イチゴはもともと繁殖力が旺盛な植物で、放っておいても勝手に増えていきます。それなりに実もつけます。

イチゴの語源は日本書紀などに出てくる「いちびき」ではないかと言われています。またイチゴを漢字で書くと「苺」。草冠に母。どんどん増える子沢山がこの字の由来だそうです。…とわかったふりして書いていますが、全部ネット情報。孫引きです。ネットを使うと何でも検索して調べることができるので便利ですが、不用意に信じてしまうのは危険です。このイチゴの情報も自分では検証していませんから本当かどうかわかりません。

話がそれますが、ネットには様々なマナー情報が溢れていますよね。例えばノックは3回とか、ワインで乾杯するときはグラスを当ててはいけない、とか。いずれも嘘っぱちです。と言うとどこかから叱られるかもしれないので、私はそんなことは信じていません、と言い換えておきます。孫引きが孫引きを呼んでいつしかそれが常識となってしまう。ネットってすごいですね。

こんなのも見つけました。苺ショートケーキを食べるときはイチゴから食べてはいけない! 窮屈な世の中になったものです。こんなどうでもいいマナー、一体誰が作っているんでしょう。

2020年明けましておめでとうございます

お正月になったと思ったらもう9日が過ぎてしまいました。この分だと2020年もあっという間にまた年末になってしまいそうです。

お正月といえば年賀状。13年前に会社を辞めたあとも毎年200枚ぐらいの年賀状を出していましたが、年々年賀状を書くのが面倒になってきて、この2~3年で半分の100枚にまで減らしました。義理で出していた相手や何年も何十年も会っていない人から徐々に減らしていきました。来る年賀状にも、「年賀状は今年で最後」と書かれているものもチラホラ。自分もそろそろ今流行りの年賀状終活宣言をして完全にやめてしまおうかと考えていました。ところが、今年はちょっとした心境の変化が。

今年届いた年賀状は約80枚。これが多いのか少ないのかわかりませんが、なんだかんだといって、元旦になるとまだかまだかと郵便受けを眺めている自分がいることも事実。来ないと寂しい年賀状。わがままなものです。今年届いた約80枚の年賀状を眺めながら、年末年始に自分のことを思い出してくれた人がこの世に少なくとも80人はいたんだなと思うと、何となくうれしくなりました。

年を取ったから年賀状をやめるという考え方もよくわかりますが(自分もそうでしたから)、一方で年を取ったからこそ年に一度ぐらいはめったに合わない友人と安否を確認し合うというのもいいものだという思いがわいてきました。長年会っていないからと出すのをやめてしまった友人のことも、その後どうしているか気になってきました。会っていないからこそ年賀状は貴重だったのかもしれません。年賀状終活宣言改め年賀状復活宣言を検討している今日この頃です。まあまた1年後にどう心境が変化しているかわかったものではありませんが。

さて写真は我が家の蝋梅です。名前からすると梅の一種のように思われますが、梅はバラ科。蝋梅はクスノキの一種だそうです。全然違うんですね。年末からちらほらと花が開きはじめ、正月の殺風景な庭木に潤いを与えています。甘い香りが特徴といいますが、自分は鼻が利かないのでよくわかりません。ただ見た目はとてもきれいです。2月まで咲き続けて楽しませてくれます。

蝋梅の花言葉は「慈愛」だそうです。地球上のあらゆる生き物に「慈しみ」をもって接していきたいものです……というのは、本ブログの年頭のあいさつの締めくくりとしては収まりがいいのですが、さすがにこれはちょっと偽善的過ぎてこっ恥ずかしい。何はさておき、今年もよろしくお願いします! と年賀状の慣用句で締めくくることにします。

 

 

「おいしい野菜の見分け方」考

10月から連日サトイモを出荷しています。我が農園の主力商品です。サトイモは比較的寒さに強いので、1月末まで掘り続けます。

ところでサトイモにしてもサツマイモにしても、イモ類は当たり前ですが土の中で育ちます。土の中には、微生物や昆虫など様々な生物が生息しています。芋が大好きな生物もたくさんいます。その代表はコガネムシの幼虫でしょう。かじるのは一部分なのですが、少しでもかじられれば当然商品価値は下がってしまいます。もっとやっかいなのは線虫です。線虫が発生すると表面の見栄えが著しく悪くなるので、大発生するとほぼ壊滅状態になりかねません。

ネットには「おいしい野菜の見分け方」なる情報があふれています。芋でいうと、よく見かけるのは「表面がきれいなものを選びなさい」というもの。確かに一理ありますが、それが高じると、少しでも虫にかじられた跡があったりしては買ってもらえなくなります。そうなると農家はきれいな芋を作るために、害虫を退治することになります。農薬の出番です。葉物野菜には農薬は当たり前のように使用されていますが、芋でも事情はさほど変わりません。

農薬には、一部の害虫にしか効果をあらわさないような比較的ゆるやかなものから、土中のあらゆる生物を一網打尽に退治してしまう超強力なものまで、さまざまな種類があります。農薬は一度使いだすと次第に強力なものへと移行していく傾向があります。農家は出荷用の野菜とは別に、自家用に無農薬野菜を作っているなどとよく言われますが、まんざら嘘ではありません。

お金を出して買う以上、少しでもきれいなものを買いたいという気持ちはよくわかりますが、必要以上に見た目にこだわりすぎるのもどうでしょうか。虫にかじられた芋も見た目がきれいな芋も、実際のところ味が変わるわけではありません。我が農園では土壌消毒をしていないため、毎年掘り出した芋の1~2割ぐらいがコガネムシの幼虫にかじられています。そんな芋も、十分食するに値するものは安くして販売していて、すぐに売り切れてしまいます。安いので利益はほとんど出ませんが、捨てるのはもったいない。割り切ってしまえばそんな野菜はお買い得ですよ。もちろん我が家で食べているのもそんな野菜ばかりです。

露往霜来

この数日でめっきり寒くなってきました。先週の金曜日(11月22日)ごろから雨模様のすっきりしない天気が続き、ようやく2日ほど前に晴れ上がった途端、最低気温も一気に下がりました。朝の畑は霜で一面真っ白です。埼玉県(熊谷)の初霜は大体11月17日前後だそうなので、今年は少し遅かったことになります。

長雨のおかげでたっぷり水分を含んだ畑では、写真のような霜柱もあちらこちらに。発芽直後に霜柱にあうと、芽が持ち上げられてしまいます。子どものころは霜柱を踏んだ時の感触が楽しくて踏み歩いたものですが、畑では喜んでばかりもいられません。

いよいよ明日から師走です。今年も残すところ1か月となってしまいました。露往霜来。ついこの前まで草木に宿っていた朝露は、気が付けば霜に変わってしまったという4字熟語です。1年もあっという間ですね。畑もそろそろ本格的な冬支度です。

 

 

サツマイモ収穫

今年は10月に入ってもまだまだ暑い日が続いていて、焼き芋が恋しくなるのはまだまだ先になりそうですが、収穫は今がピークです。写真は収穫したばかりの紅はるかです。大きさがつかみにくいかもしれませんが、中央の一番長く見える芋の長さが大体30センチぐらい。今年はかなり成長がよく、大きめで多収、豊作でした。天候不順の夏でしたが、さすがは過去何度となく飢饉や食糧難を救ってきたサツマイモ。天候の影響を受けにくい、ありがたい農作物です。

川越と言えばサツマイモが有名ですが、現在はさほど生産量が多いわけではありません。江戸時代に三富(さんとめ)地区がサツマイモの生産地として開拓されましたが、現在もその名残を残しているのは三芳町です。武蔵野の広大な平地林と自然環境を生かしたサツマイモ生産が今も脈々と受け継がれています。

昭和のころまでは川越芋といえば主に紅赤という品種のことをさしていました。ホクホク系のサツマイモです。しかし紅赤は土を選び、しかも育てるのが難しくて収量も少ないことから、次第にすたれてしまいました。現在川越芋として出回っているのはほどんどが紅あずまです。紅あずまはホクホク感とねっとり感が程よく調和されていて甘みも強く、収量も多いことから今ではすっかり定番の品種となりました。ただ最近ではよりねっとり感が強く、より甘い品種がいくつも開発されています。紅はるかもそのひとつです。

我が農園では数年前まで紅赤を作っていました。そのころ川越市内で紅赤を作っていたのはほんの数軒しかありませんでした。川越芋の伝統を途切れさせないようにとの川越市からの要請で作っていたのですが、やはり生産を続けるのは難しく、結局やめてしまいました。今、川越市内で紅赤を作っている農家はほとんどなくなってしまったかもしれません。三芳町ではかろうじて数件の農家が今でも紅赤を生産し続けています。それらの農家さんには頭が下がります。

さて、品種に関わらず、収穫してすぐのサツマイモはあまり甘くありません。しばらく保存しておくと次第にでんぷんが糖化して甘くなっていきます。ただサツマイモは寒さに弱いため、保管には結構気を使います。冬を越すには保管用の設備も必要となりますから、我が農園のような設備のない零細な農家は年内に売りつくさなければなりません。

さあ、これからいよいよ本格的な焼き芋の季節を迎えます。みなさん、おいしいサツマイモをたくさん食べてくださいね。

野草の花(3)

野草の花シリーズ第3弾。黄色、赤ときたのでやはり青か。ということで青い花を探すと、ありました。ツユクサです。どこにでも生えているお馴染みの野草です。草刈りをして背の高い草がなくなると一面を覆いつくすように繁茂します。

花はとても小さく、数ミリ程度。でも写真のようにアップで見るとなかなか複雑な形をしていることがわかります。上方に青い2枚の花弁があり、その付け根から雄しべと雌しべが伸びています。雄しべは6本ですがその長さと形が3本、2本、1本という組み合わせで違っているのが凝っています。その背景にはもう1枚の白い花弁があります。

ツユクサの花は朝開いて午後にはしぼんでしまうそうです。「そうです」という言い方をするのは自分で確認したことがないからです。朝顔のように大きな花であれば見てわかりますが、なにしろツユクサは小さい。しかもたくさんの花が常に咲いているので、今咲いている花が昨日と同じ花なのか違う花なのかわかりません。こんど目印でもつけて観察してみます。

このツユクサは万葉集にも詠まれているほど古くから親しまれてきた野草です。その花の儚さが日本人の心を揺さぶるのでしょうか。たくさんの花を付けた一面のツユクサを遠くから眺めると、まるで絨毯を敷いたようでなかなか美しい光景ですが、畑にとってはやはり雑草。退治しなければなりません。