サトイモ

 わが農園の主力商品はサトイモです。5月ごろに芽生えたサトイモは、真夏には人間の背丈ほどに成長し、太陽の光を最大限受け止めようと大きな葉を広げます。上の写真は8月に撮影したもので、一番勢いのある時期のようすです。

 葉の大きさを測ってみたところ、大きなもので70センチぐらいはあります。昔、子供の頃に雨に降られるとサトイモの葉を傘代わりにしていたことを思い出します。子どもであれば十分雨をしのぐことができそうですね。

 日本ではサトイモ栽培の歴史は稲よりも古く、縄文時代から栽培されていたと言われています。とても丈夫な野菜で、草刈り以外にはほとんど手間がかかりません。

 さて、9月になると次第に葉も元気を失ってきて、いよいよ収穫時期が近づいてきます。この時期、地下ではどうなっているかというと……。

 まだ小さいですが、写真で茎の根元のふっくらした部分が親芋です。そこから小芋が出ていて、さらにこの小芋に孫芋が付きます。その孫芋がみなさんがよく食べているサトイモです。一方、小芋は小頭とも言い、店頭でも販売されていることもありますが、やや硬めでネットリ感は孫芋には劣ります。ただ、一般的に価格が安いのでお買い得ではあります。

 ところで我が家の庭には今年、サトイモが1本勝手に生えてきました。去年の芋が転がっていたのでしょう。観葉植物としてそのまま放置しています。芋は期待できませんが、夏の風情があってなかなかオツなものです。サトイモは水耕栽培もできますので、室内で観葉植物として育てることも可能です。

 大きな葉がしおれてくると、いよいよ本格的なサトイモの季節となります。

オクラ

 今、オクラの最盛期です。オクラはアオイ科の植物で、水戸黄門でお馴染みの徳川家三つ葉葵のあの葵の仲間です。意外ですね。日本で栽培されるようになったのは明治以降なので、歴史的には新しい野菜です。スーパーでよく見かけるのは五角形のオクラですが、丸いオクラもあります。ネバネバした食感が特徴で、栄養豊富。近頃は免疫力アップにつながる食材として注目されているようです。

 花の美しさは野菜の中でも一番ではないでしょうか。オクラを植えた一角は、真夏の畑の中でひときわ存在感を示しています。

 オクラの成長はとても速く、6月頃には10センチぐらいの背丈だったのが、その後グングン成長し、一月ほどであっという間に人間の背丈ほどになります。9月いっぱいまで成長を続けますが、その間、欠かすことなく花を咲かせて実をつけ続けます。生命力旺盛な植物です。

 実の成長も速く、開花してからほんの数日で収穫期を迎えます。オクラの実は大きくなると繊維が固くなってしまい、煮ても焼いても食べられなくなってしまうので、ほどよい大きさで収穫しなければなりません。収穫日が一日ズレただけでアウトになってしまいます。

 どのくらい成長が速いか、定点観測をしてみました。

花が咲きました。

翌日、すでに実ができ始めています。

花が咲いて二日目です。

花が咲いて四日目、ちょうど程よい大きさです。ここで収穫しないと翌日には大きくなりすぎて固くなってしまいます。

 野菜の天敵カメムシはオクラが大好物ですが、オクラの成長があまりにも速いため致命的な食害を受けることが少なく、その点でもありがたい野菜です。そろそろ夏バテ気味の皆さん、オクラをたくさん食べるとその生命力にあやかれるかもしれませんよ。

カボチャの花・ウリ科の花

 梅雨の真っ最中ですが、夏野菜たちは順調に花を咲かせています。とりわけ大きな花を咲かせているのがカボチャ。朝はきれいに開いていますが、昼頃にはすぼんできます。カボチャの花は人気者で、ウリハムシをはじめいろいろな虫がやってきます。その容姿からすると、いかにも花粉や蜜がたっぷりありそうに見えますよね。

 南瓜と書くくらいですからもともとは南の植物なのでしょう。人類は1万年ぐらい前からカボチャを栽培していたという研究もあるそうですから、人類とカボチャとの付き合いは相当長いようです。日本には16世紀ごろにポルトガルから入ってきたといいますから、さほど古くはありません。

 ところでウリ科の植物の花は雌雄別花が特色ですが、雄花・雌花は容易に見分けることができます。

 写真右のように、花の下に小さな膨らみがあるのが雌花で、これが大きくなって実になります。左の雄花にはこれがありません。

 カボチャといえば冬至に食べるものという印象が強いですが、実が成るのは夏です。それがなぜ冬至と結びついたのかというと……ネットで検索すればその理由を説明したサイトが沢山出てきます。よってここでは省略。

 カボチャはビタミンなどの栄養が豊富で、しかも日持ちが良く、サツマイモと同様、採りたてよりもしばらく寝かせたほうが甘くなります。9月~10月ごろに食べると一番美味しいような気がします。

 そんなことに想いを巡らせていると、カボチャの天ぷらや煮物が無性に食べたくなってきました。収穫が待ち遠しい!

同じウリ科のゴーヤの花。
こちらはスイカの花。ゴーヤと大きさも形もよく似ています。いずれも雌雄別花です。

ナスとトマト

 夏野菜の代表格というとナス、トマトが思い浮かびます。もっとも今はスーパーでほぼ1年中手に入るので、夏野菜のイメージは薄れてしまったかもしれませんね。

 夏の野菜はだいたい体を冷やす効果があります。キュウリもそうですが、水分が多い上にカリウムを多く含むのがその要因です。一方でそれ以外の栄養価はとぼしいものも多く、キュウリなどは世界一栄養のない野菜などとありがたくないレッテルが貼られたりします。ナスも似たりよったりで、あまり栄養価の高い野菜とは思われていません。

 ただナスにはナスニンというポリフェノールが多く含まれているため、抗酸化作用を期待することができます。あの黒々とした皮に多く含まれているため、皮ごと食べるのが秘訣です。お上品な焼き茄子のように皮を剥いてしまってはもったいない。

 まあ栄養価はともかく、漬物にしても煮ても焼いても炒めても美味しいナス。これからが旬ですからたくさん食べてください。

 ところで上のナスの花の写真を見てください。前回のジャガイモの花とよく似ていますよね。同じナス科だというのも納得です。トマトもナス科ですね。花の色はほとんどが黄色でナスやジャガイモとは大違いですが、雌しべを取り囲んでいる雄しべの精悍さなどはよく似ています。

 ナスは日本の気候によく合っているらしく、ほとんど手間なしでどんどん実を付けますが、トマトはとてもデリケートな野菜で、気温や雨量の影響をストレートに受けます。そのあたりのバランスがちょっと崩れると病気になったり裂果したり。栄養豊富なせいか虫も大好きで害虫被害も多く、路地栽培でしかも無農薬で完熟トマトを生産するのは至難の業です。

 ただ、太陽の光をたくさん浴びて熟した路地物トマトの味は格別です。スーパーで売られているトマトはほとんどがハウス栽培ですが、直売所などで路地物を見つけたらぜひ味わってみてください。貴重です。

ジャガイモの花―花の咲く芋、咲かない芋―

 3月中旬に蒔いたジャガイモが5月に入って次々と花を咲かせています。葉は青々として、いかにも盛んに光合成を行っているぞ、という感じ。6月になると花も終わって、時折小さなトマトのような実を付けます。次第に葉も元気を失っていきます。その頃には地下には芋が大きく育っていて、そろそろ収穫時期となります。あとわずかです。

 ジャガイモが青々と成長している5月、同じ芋でもサトイモはようやく芽が地上に現れてきます。その芽力は相当なもので、固まった表面の土を押し上げ、少々の石が乗っていても平気で持ち上げます。

 ジャガイモもサトイモも芋の部分は地下茎で、その点、根が太ったサツマイモとは異なります。でもいずれも芋から芽が出て繁殖する点では共通です。

 芋から繁殖するということは、交配していないということで、つまりは自己複製の繰り返しということになります。品質が悪かったり、病気を持っていたりするとそれが複製され続けることになりますから、良い種芋を用意することが重要になってきます。

 ところで冒頭に記した通り、ジャガイモは花を咲かせ、時に実もつけますが、サトイモやサツマイモは滅多に花が咲きません。いつもどこかに一輪ぐらい花が咲いていないものか見ているのですが、今までお目にかかったことがありません。さあ今年はどうでしょうか。

アヤメの花

 3年ほど前でしょうか。畑の片隅に突如アヤメが出現しました。どこかから種が飛んできたのでしょうか。そのアヤメを掘り出して、野菜づくりに邪魔にならず、かと言って草に埋もれにくい所に移植しました。去年は細々と花を咲かせていましたが、今年は一気に群れ化しました。

 アヤメの花はとても不思議な形をしています。模様がついて垂れ下がっている花びらが外花被と呼ばれる花弁でこれが3枚あり、そそり立っている3枚の花びらは内花被と呼ばれる花弁です。その中間にやはり3枚の花びらのようなものがありますが、これはなんと雌しべの花柱だそうです。3枚に分かれていますが元の部分は一体になっているんだそうです。そのめしべの裏側に雄しべがあります。

花柱の裏側。花柱の先端が花頭、花柱に覆われるように雄しべがある。

 随分と凝ったつくりですよね。アヤメの花は横から見ても上から見ても独特の存在感と美しさがあります。畑に生える植物は十把一絡げで「雑草」と呼ばれてしまいますが、アヤメを雑草と呼ぶのは少々気が引ける。同じ植物なのに勝手なものです。

何の花でしょう?

この写真の花、何の花でしょうか?

ヒント
①野菜です。
②スーパーには必ずあります。
③焼き鳥屋でもおなじみです。
④蕎麦屋でもおなじみです。
⑤鍋料理には欠かせません。

 こんなにヒントがなくてもわかりますよね。正解は長ネギです。いわゆるネギ坊主です。小さな花の集合体で、一つの花を取り出してみるとこんな形になっています。

 さてこのネギという植物、従来の形態的な分類方法ではユリ科の植物とされていましたが、DNA解析による新しい分類法(APG体系)ではヒガンバナ科ネギ亜科に分類されています。タマネギ、ニンニク、ラッキョウなどもみな同じ仲間です。

 まあ小難しいことはさておき、このネギ坊主ですが、実は食べられます。花が開ききる前のつぼみ状態のものを天ぷらにすると結構おいしく、酒の肴にはピッタリです。

 冬の間、鍋の必需品として食卓を賑わせた長ネギも、4月ごろになるとトウ立ちしてネギ坊主ができてしまいます。そうなるともう固くてネギとしては食べられません。家庭菜園でネギを作っている方、もしネギ坊主ができてしまったら早めにつぼみを摘んで天ぷらで食してみてください。珍味ですよ。

 ネギ坊主を放っておけば当然種ができます。最近はF1品種が多いので要注意ですが、その種を蒔けば当然芽が出ます。また、ネギ坊主をちょん切ってしまったネギをそのままさらに放置しておくと、やがて分けつして再生します。多くの農家はネギ坊主を切り取った後、新たな場所に移植して再生産しています。我が農園ももちろんそうして再利用しています。

ダイコンの花

人知れず
忘れられた茎に咲き
人知れず
こぼれ散り
細かな白い
だいこんの花(久弥)

 1970年代に放映されていたドラマ「だいこんの花」のオープニングに朗読される森繁久彌の詩です。ドラマの内容はよく覚えていませんが、ダイコンの花を見るといつもこの詩が蘇ります。

 畑の片隅で冬に掘り残されて放置されたダイコンが、いつしか花を咲かせている。「人知れず忘れられた」というのはそんな情景を表しているのでしょう。

 なんとなく地味で目立たない印象がありますが、まとまって咲いていると、かなりの存在感を示します。ダイコンはアブラナ科ダイコン属の植物ですので、菜の花の遠い親戚といったところでしょうか。ただ一般的な黄色い菜の花に比べると確かにどこか控えめです。

 遠目には真っ白に見えるその花も、近づいて見ると花びらの縁が薄っすらと紫がかっていて、上品な美しさを醸し出しています。小さなモンシロチョウのようにも見えますね。ダイコンの種類によって花びらの形や色が微妙に違います。

 ダイコンは食卓ではおなじみの根菜ですが、その葉も栄養豊富な緑菜です。でもお店で売られているダイコンには通常は葉が付いていません。もったいないですね。直売所などで葉付きダイコンを見かけたらラッキー。ぜひ買ってみてください。葉の部分はすぐに切り離して調理するのが秘訣です。

ナガミヒナゲシ――ポピーなの? ヒナゲシなの?

 4月から5月にかけて、よく見かけるのが写真のようなオレンジ色のポピーです。

 と言ったそばからなんですが、このポピーという名称はかなり曖昧な呼び方で、ネットで調べると、ポピーはケシ科の植物の総称とあったり、ケシ科植物の一種とあったり、ヒナゲシのことと説明していたり、結構まちまちです。断言はできませんが、調べた限りでは英語でケシ科植物全般を指す言葉と考えてよさそうです。

 では今取り上げているこのポピーの正式名は何かというと、ナガミヒナゲシといいます。ケシ科ケシ属の種名がナガミヒナゲシということですね。ちなみに普通のヒナゲシはケシ科ケシ属の種名がヒナゲシです。まあ親戚みたいなものでしょう。

 ヒナゲシというとオッカの上で咲いているものとばかり思っていましたが、このナガミヒナゲシは道路端のコンクリの隙間から生えていることもしばしば。それだけ生命力が強いんですね。もちろん畑にもよく生えてきます。

 タンポポの葉を小さくしたようなものが生えているなと思っていると、そこから1本の細い茎がニョキニョキと伸びていき、その先端に小さなラグビーボールのような形の蕾が付きます。蕾は下を向いていて、まるでうなだれているよう。ところが花が咲くときはシャキッと天に向かいます。

 花びらは4枚といわれますが、5枚のものや6枚のものも結構多く見かけます。変幻自在なのでしょうか。この花弁は手で触れるとすぐに落ちてしまいます。花が終わると細長い実をつけます。だからナガミヒナゲシか。そのまんまでした。

 実の中には1000粒を超える種が入っているそうで、これが散らばるのですから繁殖力は半端ではありません。危険外来種だから駆除すべきだという声もよく聞きますが、この可憐な花を見るとつい気も緩んでしまいますね。

 ところでケシというと思い浮かべるのがアヘン。ただしヒナゲシやナガミヒナゲシからはアヘンは取れないそうなので変な気は起こさないように。ただ、樹液にはかぶれる成分が含まれているそうですので、油断は禁物です。

タンポポ

 タンポポはどこでも見かける身近な植物ですが、不思議がいっぱい。

 まず不思議なのはその花。黄色い部分全体で一つの花のように見えますが、これは花の集合体です。花びらの一つ一つがそれぞれ独立した花なんですね。しかも、その花びら1枚(に見えますよね)も実は5枚の花びらの集合体だそうです。綿毛の一つ一つに種がついているのもこれで納得です。まあそのあたりの詳しいことは専門家が書いた(と思われる)ブログや記事がネットには山ほどありますので、それらを見てください。

 日本で見かけるタンポポには在来種と外来種がありますが、最近は在来種にはめったにお目にかかることができません。我が農場に生えているのも外来種です。冬の間は葉をロゼット状態にしてまるで地面にしがみついているかのように寒さをしのぎます。寒い冬を耐えたタンポポは、暖かくなると一気に花を咲かせます。

 ただ、この時期はまだ背丈の高い草があまり生えていないので、タンポポの花も地面スレスレに咲いていることが多いのですが、受粉して種ができ始めると、ニョキニョキと茎が伸びていきます。風を受けやすくして綿毛に付いた種を飛ばすんですね。

 春の風に乗ったタンポポの綿毛が畑の中を漂うようになると、いよいよ夏野菜の本格的な作付け時期が始まります。

写真を撮っていたらミツバチがやってきました。蜜を吸っているのか、はたまた花粉を集めているのか。これで受粉も無事完了か。