ジャガイモの花―花の咲く芋、咲かない芋―

 3月中旬に蒔いたジャガイモが5月に入って次々と花を咲かせています。葉は青々として、いかにも盛んに光合成を行っているぞ、という感じ。6月になると花も終わって、時折小さなトマトのような実を付けます。次第に葉も元気を失っていきます。その頃には地下には芋が大きく育っていて、そろそろ収穫時期となります。あとわずかです。

 ジャガイモが青々と成長している5月、同じ芋でもサトイモはようやく芽が地上に現れてきます。その芽力は相当なもので、固まった表面の土を押し上げ、少々の石が乗っていても平気で持ち上げます。

 ジャガイモもサトイモも芋の部分は地下茎で、その点、根が太ったサツマイモとは異なります。でもいずれも芋から芽が出て繁殖する点では共通です。

 芋から繁殖するということは、交配していないということで、つまりは自己複製の繰り返しということになります。品質が悪かったり、病気を持っていたりするとそれが複製され続けることになりますから、良い種芋を用意することが重要になってきます。

 ところで冒頭に記した通り、ジャガイモは花を咲かせ、時に実もつけますが、サトイモやサツマイモは滅多に花が咲きません。いつもどこかに一輪ぐらい花が咲いていないものか見ているのですが、今までお目にかかったことがありません。さあ今年はどうでしょうか。

アヤメの花

 3年ほど前でしょうか。畑の片隅に突如アヤメが出現しました。どこかから種が飛んできたのでしょうか。そのアヤメを掘り出して、野菜づくりに邪魔にならず、かと言って草に埋もれにくい所に移植しました。去年は細々と花を咲かせていましたが、今年は一気に群れ化しました。

 アヤメの花はとても不思議な形をしています。模様がついて垂れ下がっている花びらが外花被と呼ばれる花弁でこれが3枚あり、そそり立っている3枚の花びらは内花被と呼ばれる花弁です。その中間にやはり3枚の花びらのようなものがありますが、これはなんと雌しべの花柱だそうです。3枚に分かれていますが元の部分は一体になっているんだそうです。そのめしべの裏側に雄しべがあります。

花柱の裏側。花柱の先端が花頭、花柱に覆われるように雄しべがある。

 随分と凝ったつくりですよね。アヤメの花は横から見ても上から見ても独特の存在感と美しさがあります。畑に生える植物は十把一絡げで「雑草」と呼ばれてしまいますが、アヤメを雑草と呼ぶのは少々気が引ける。同じ植物なのに勝手なものです。

何の花でしょう?

この写真の花、何の花でしょうか?

ヒント
①野菜です。
②スーパーには必ずあります。
③焼き鳥屋でもおなじみです。
④蕎麦屋でもおなじみです。
⑤鍋料理には欠かせません。

 こんなにヒントがなくてもわかりますよね。正解は長ネギです。いわゆるネギ坊主です。小さな花の集合体で、一つの花を取り出してみるとこんな形になっています。

 さてこのネギという植物、従来の形態的な分類方法ではユリ科の植物とされていましたが、DNA解析による新しい分類法(APG体系)ではヒガンバナ科ネギ亜科に分類されています。タマネギ、ニンニク、ラッキョウなどもみな同じ仲間です。

 まあ小難しいことはさておき、このネギ坊主ですが、実は食べられます。花が開ききる前のつぼみ状態のものを天ぷらにすると結構おいしく、酒の肴にはピッタリです。

 冬の間、鍋の必需品として食卓を賑わせた長ネギも、4月ごろになるとトウ立ちしてネギ坊主ができてしまいます。そうなるともう固くてネギとしては食べられません。家庭菜園でネギを作っている方、もしネギ坊主ができてしまったら早めにつぼみを摘んで天ぷらで食してみてください。珍味ですよ。

 ネギ坊主を放っておけば当然種ができます。最近はF1品種が多いので要注意ですが、その種を蒔けば当然芽が出ます。また、ネギ坊主をちょん切ってしまったネギをそのままさらに放置しておくと、やがて分けつして再生します。多くの農家はネギ坊主を切り取った後、新たな場所に移植して再生産しています。我が農園ももちろんそうして再利用しています。

ダイコンの花

人知れず
忘れられた茎に咲き
人知れず
こぼれ散り
細かな白い
だいこんの花(久弥)

 1970年代に放映されていたドラマ「だいこんの花」のオープニングに朗読される森繁久彌の詩です。ドラマの内容はよく覚えていませんが、ダイコンの花を見るといつもこの詩が蘇ります。

 畑の片隅で冬に掘り残されて放置されたダイコンが、いつしか花を咲かせている。「人知れず忘れられた」というのはそんな情景を表しているのでしょう。

 なんとなく地味で目立たない印象がありますが、まとまって咲いていると、かなりの存在感を示します。ダイコンはアブラナ科ダイコン属の植物ですので、菜の花の遠い親戚といったところでしょうか。ただ一般的な黄色い菜の花に比べると確かにどこか控えめです。

 遠目には真っ白に見えるその花も、近づいて見ると花びらの縁が薄っすらと紫がかっていて、上品な美しさを醸し出しています。小さなモンシロチョウのようにも見えますね。ダイコンの種類によって花びらの形や色が微妙に違います。

 ダイコンは食卓ではおなじみの根菜ですが、その葉も栄養豊富な緑菜です。でもお店で売られているダイコンには通常は葉が付いていません。もったいないですね。直売所などで葉付きダイコンを見かけたらラッキー。ぜひ買ってみてください。葉の部分はすぐに切り離して調理するのが秘訣です。

ナガミヒナゲシ――ポピーなの? ヒナゲシなの?

 4月から5月にかけて、よく見かけるのが写真のようなオレンジ色のポピーです。

 と言ったそばからなんですが、このポピーという名称はかなり曖昧な呼び方で、ネットで調べると、ポピーはケシ科の植物の総称とあったり、ケシ科植物の一種とあったり、ヒナゲシのことと説明していたり、結構まちまちです。断言はできませんが、調べた限りでは英語でケシ科植物全般を指す言葉と考えてよさそうです。

 では今取り上げているこのポピーの正式名は何かというと、ナガミヒナゲシといいます。ケシ科ケシ属の種名がナガミヒナゲシということですね。ちなみに普通のヒナゲシはケシ科ケシ属の種名がヒナゲシです。まあ親戚みたいなものでしょう。

 ヒナゲシというとオッカの上で咲いているものとばかり思っていましたが、このナガミヒナゲシは道路端のコンクリの隙間から生えていることもしばしば。それだけ生命力が強いんですね。もちろん畑にもよく生えてきます。

 タンポポの葉を小さくしたようなものが生えているなと思っていると、そこから1本の細い茎がニョキニョキと伸びていき、その先端に小さなラグビーボールのような形の蕾が付きます。蕾は下を向いていて、まるでうなだれているよう。ところが花が咲くときはシャキッと天に向かいます。

 花びらは4枚といわれますが、5枚のものや6枚のものも結構多く見かけます。変幻自在なのでしょうか。この花弁は手で触れるとすぐに落ちてしまいます。花が終わると細長い実をつけます。だからナガミヒナゲシか。そのまんまでした。

 実の中には1000粒を超える種が入っているそうで、これが散らばるのですから繁殖力は半端ではありません。危険外来種だから駆除すべきだという声もよく聞きますが、この可憐な花を見るとつい気も緩んでしまいますね。

 ところでケシというと思い浮かべるのがアヘン。ただしヒナゲシやナガミヒナゲシからはアヘンは取れないそうなので変な気は起こさないように。ただ、樹液にはかぶれる成分が含まれているそうですので、油断は禁物です。

タンポポ

 タンポポはどこでも見かける身近な植物ですが、不思議がいっぱい。

 まず不思議なのはその花。黄色い部分全体で一つの花のように見えますが、これは花の集合体です。花びらの一つ一つがそれぞれ独立した花なんですね。しかも、その花びら1枚(に見えますよね)も実は5枚の花びらの集合体だそうです。綿毛の一つ一つに種がついているのもこれで納得です。まあそのあたりの詳しいことは専門家が書いた(と思われる)ブログや記事がネットには山ほどありますので、それらを見てください。

 日本で見かけるタンポポには在来種と外来種がありますが、最近は在来種にはめったにお目にかかることができません。我が農場に生えているのも外来種です。冬の間は葉をロゼット状態にしてまるで地面にしがみついているかのように寒さをしのぎます。寒い冬を耐えたタンポポは、暖かくなると一気に花を咲かせます。

 ただ、この時期はまだ背丈の高い草があまり生えていないので、タンポポの花も地面スレスレに咲いていることが多いのですが、受粉して種ができ始めると、ニョキニョキと茎が伸びていきます。風を受けやすくして綿毛に付いた種を飛ばすんですね。

 春の風に乗ったタンポポの綿毛が畑の中を漂うようになると、いよいよ夏野菜の本格的な作付け時期が始まります。

写真を撮っていたらミツバチがやってきました。蜜を吸っているのか、はたまた花粉を集めているのか。これで受粉も無事完了か。