秋の花、そして幸福の兆し

 秋の花というと多くの人がまず思い浮かべるのはコスモスかもしれません。漢字で書くと「秋桜」。桜好きの日本人は秋にも桜を咲かせました。今や秋になると日本中のいたるところでコスモスを見ることができます。赤、白、ピンクなどカラフルなコスモスの花が青い空のもとで一面に咲いていると、気候の良さと相まって実に清々しいものです。

 一輪の花を見ると、8枚の花びらを持つ一つの花のように見えますが、実はこれはたくさんの花の集合体。キク科の植物の特徴ですね。以前取り上げたタンポポと同じです。

 コスモスと同様に秋に群生して花を咲かせる植物といえば、彼岸花もあります。曼珠沙華と書くと独特の風情がありますね。夏の暑さが一段落した頃、突如地面からニョキニョキと花茎が伸びてきてお彼岸の頃に花を咲かせます。コスモスに比べると盛りの時期は短く、10月に入ると枯れて散っていきます。この彼岸花も一輪の花のように見える部分は複数の花の集合体ですが、独特の形をしています。真っ赤な色は綺麗でもあり、なんとなく不気味でもあります。

 花が散ると地面からはいっせいに葉が生え始めます。なんとも不思議な植物です。スイセンなどほかのヒガンバナ科の植物と同じように球根には毒がありますので、扱いには注意が必要です。

 さて何度も書いていますが、畑には様々な植物が勝手に生えてきます。畑は野菜を作る場所なので、野菜以外はすべて雑草ということになりますが、それは人間側の都合ですから、植物には関係ありません。放ったらかしているとだんだん大きな植物が繁茂してきて、やがていろいろな木も生えてきます。数年経つと雑木林のようになってしまいます。そんな遊休農地がこの近辺でもだんだん増えてきました。

 それはさておき、我が農園を観察して回ってみると、雑草の中にこんな花を見つけました。

 まるで大きな口を開けて黄色い舌を出しているような花ですね。アキギリ属の植物と思われます。他にも生えているかと思い、あちこち眺めて回ったのですが、他には見つかりませんでした。アキギリはシソ科の植物で、サルビアなどの仲間です。アキギリ自体はさほど珍しいものではありませんが、このような色形の花は今まで見たことがありません。

 またこの時期はカタバミの花もよく見かけます。小さな植物ですが繁殖力が旺盛なのでどこにでも生えてきます。

 ありふれた植物ですが、拡大してみると結構きれいな花です。その葉は3枚構成でよくクローバーと間違えられます。我が農園では両者が混在してあちらこちらに密生しています。それぞれの葉を見比べてみましょう。

 ご覧のようにカタバミの葉はハート型をしているのが特徴です。それに対してクローバーはというと……。

 写真を撮ろうと眺めていたら、思いがけず四つ葉のクローバーを見つけました。何かいいことがありそうな…。

 写真のようにクローバーの葉は楕円形で中に白い線があるのが特徴です。カタバミはカタバミ科ですが、クローバーはシロツメクサのことで、マメ科の植物です。ちなみにシロツメクサの花が咲くのは夏なので今は咲いていません。クローバーと間違えられるカタバミも四つ葉になることがごく稀にあるそうですが、見つけるのは至難の業だそうです。もし見つけたらクローバーよりもご利益があるかもしれませんね。

ニラ

 お盆のあたりから畑のあちらこちらでニラの花が咲き始めます。わが農園では作物としてはニラを栽培していないのですが、勝手に生えてきて至るところに群生しています。その繁殖力は相当なものです。お陰で、ニラ料理を食べたいときには必要な量を刈り取って使うことができて、なかなか重宝しています。

 上の写真のようにニラは小さな白い花をたくさん咲かせるので、群生していると一面が白い花で満たされ、真夏の暑さにうんざりしてくる頃に一服の清涼剤のような爽やかさをもたらしてくれます。そんな点でも貴重な植物です。小さな一つひとつの花も近づいてよく見ると意外と美しい花です。これが9月下旬まで次々と咲き続けます。

 これだけたくさんの花を咲かせるので、当然種もたくさんできますが、種を蒔いて栽培しようとすると結構時間がかかります。プランターなどで作ろうと思ったら、その辺に生えているニラを見つけ、数株引っこ抜いて植えるのが一番手っ取り早い方法です。まず枯れることはありません。ただし畑や他人の敷地から取ると泥棒になってしまいますのでご注意を。食べるときは使う分だけ葉を切り取って、そのまま放っておけばまた葉が生えてきます。株も年々増えていきます。

 ところで、ニラはネギ属の植物ですが、ネギ属は以前はユリ科に分類されていました。新しいAPG分類ではヒガンバナ科になっています。よくニラとスイセンを間違えて食べて食中毒になったというニュースを目にします。スイセンもヒガンバナ科ですので、その葉は似ているといえば似ています。しかしスイセンの葉はニラよりも幅が広くて厚く大きいし、ニラ特有の匂いがしないので、普通であれば間違えることはないはずです。もちろん花を見れば違いは一目瞭然です。ただニラとスイセンが一緒に生えていると、収穫する際に混在してしまうことがあるかもしれません。スイセンは有毒なので気をつけなければなりません。

 スイセンよりももっとニラに似ている植物もあります。畑の片隅にこんな植物がありました。

 これはタマスダレという植物で、やはりヒガンバナ科です。スイセンと同じく有毒です。これも花が咲いていればすぐに区別はつきますが、葉はニラにそっくりです。ニラの隣に生えていたら一緒に摘んでしまうかもしれません。スイセンよりも要注意です。

サトイモ

 わが農園の主力商品はサトイモです。5月ごろに芽生えたサトイモは、真夏には人間の背丈ほどに成長し、太陽の光を最大限受け止めようと大きな葉を広げます。上の写真は8月に撮影したもので、一番勢いのある時期のようすです。

 葉の大きさを測ってみたところ、大きなもので70センチぐらいはあります。昔、子供の頃に雨に降られるとサトイモの葉を傘代わりにしていたことを思い出します。子どもであれば十分雨をしのぐことができそうですね。

 日本ではサトイモ栽培の歴史は稲よりも古く、縄文時代から栽培されていたと言われています。とても丈夫な野菜で、草刈り以外にはほとんど手間がかかりません。

 さて、9月になると次第に葉も元気を失ってきて、いよいよ収穫時期が近づいてきます。この時期、地下ではどうなっているかというと……。

 まだ小さいですが、写真で茎の根元のふっくらした部分が親芋です。そこから小芋が出ていて、さらにこの小芋に孫芋が付きます。その孫芋がみなさんがよく食べているサトイモです。一方、小芋は小頭とも言い、店頭でも販売されていることもありますが、やや硬めでネットリ感は孫芋には劣ります。ただ、一般的に価格が安いのでお買い得ではあります。

 ところで我が家の庭には今年、サトイモが1本勝手に生えてきました。去年の芋が転がっていたのでしょう。観葉植物としてそのまま放置しています。芋は期待できませんが、夏の風情があってなかなかオツなものです。サトイモは水耕栽培もできますので、室内で観葉植物として育てることも可能です。

 大きな葉がしおれてくると、いよいよ本格的なサトイモの季節となります。

オクラ

 今、オクラの最盛期です。オクラはアオイ科の植物で、水戸黄門でお馴染みの徳川家三つ葉葵のあの葵の仲間です。意外ですね。日本で栽培されるようになったのは明治以降なので、歴史的には新しい野菜です。スーパーでよく見かけるのは五角形のオクラですが、丸いオクラもあります。ネバネバした食感が特徴で、栄養豊富。近頃は免疫力アップにつながる食材として注目されているようです。

 花の美しさは野菜の中でも一番ではないでしょうか。オクラを植えた一角は、真夏の畑の中でひときわ存在感を示しています。

 オクラの成長はとても速く、6月頃には10センチぐらいの背丈だったのが、その後グングン成長し、一月ほどであっという間に人間の背丈ほどになります。9月いっぱいまで成長を続けますが、その間、欠かすことなく花を咲かせて実をつけ続けます。生命力旺盛な植物です。

 実の成長も速く、開花してからほんの数日で収穫期を迎えます。オクラの実は大きくなると繊維が固くなってしまい、煮ても焼いても食べられなくなってしまうので、ほどよい大きさで収穫しなければなりません。収穫日が一日ズレただけでアウトになってしまいます。

 どのくらい成長が速いか、定点観測をしてみました。

花が咲きました。

翌日、すでに実ができ始めています。

花が咲いて二日目です。

花が咲いて四日目、ちょうど程よい大きさです。ここで収穫しないと翌日には大きくなりすぎて固くなってしまいます。

 野菜の天敵カメムシはオクラが大好物ですが、オクラの成長があまりにも速いため致命的な食害を受けることが少なく、その点でもありがたい野菜です。そろそろ夏バテ気味の皆さん、オクラをたくさん食べるとその生命力にあやかれるかもしれませんよ。

カボチャの花・ウリ科の花

 梅雨の真っ最中ですが、夏野菜たちは順調に花を咲かせています。とりわけ大きな花を咲かせているのがカボチャ。朝はきれいに開いていますが、昼頃にはすぼんできます。カボチャの花は人気者で、ウリハムシをはじめいろいろな虫がやってきます。その容姿からすると、いかにも花粉や蜜がたっぷりありそうに見えますよね。

 南瓜と書くくらいですからもともとは南の植物なのでしょう。人類は1万年ぐらい前からカボチャを栽培していたという研究もあるそうですから、人類とカボチャとの付き合いは相当長いようです。日本には16世紀ごろにポルトガルから入ってきたといいますから、さほど古くはありません。

 ところでウリ科の植物の花は雌雄別花が特色ですが、雄花・雌花は容易に見分けることができます。

 写真右のように、花の下に小さな膨らみがあるのが雌花で、これが大きくなって実になります。左の雄花にはこれがありません。

 カボチャといえば冬至に食べるものという印象が強いですが、実が成るのは夏です。それがなぜ冬至と結びついたのかというと……ネットで検索すればその理由を説明したサイトが沢山出てきます。よってここでは省略。

 カボチャはビタミンなどの栄養が豊富で、しかも日持ちが良く、サツマイモと同様、採りたてよりもしばらく寝かせたほうが甘くなります。9月~10月ごろに食べると一番美味しいような気がします。

 そんなことに想いを巡らせていると、カボチャの天ぷらや煮物が無性に食べたくなってきました。収穫が待ち遠しい!

同じウリ科のゴーヤの花。
こちらはスイカの花。ゴーヤと大きさも形もよく似ています。いずれも雌雄別花です。

ナスとトマト

 夏野菜の代表格というとナス、トマトが思い浮かびます。もっとも今はスーパーでほぼ1年中手に入るので、夏野菜のイメージは薄れてしまったかもしれませんね。

 夏の野菜はだいたい体を冷やす効果があります。キュウリもそうですが、水分が多い上にカリウムを多く含むのがその要因です。一方でそれ以外の栄養価はとぼしいものも多く、キュウリなどは世界一栄養のない野菜などとありがたくないレッテルが貼られたりします。ナスも似たりよったりで、あまり栄養価の高い野菜とは思われていません。

 ただナスにはナスニンというポリフェノールが多く含まれているため、抗酸化作用を期待することができます。あの黒々とした皮に多く含まれているため、皮ごと食べるのが秘訣です。お上品な焼き茄子のように皮を剥いてしまってはもったいない。

 まあ栄養価はともかく、漬物にしても煮ても焼いても炒めても美味しいナス。これからが旬ですからたくさん食べてください。

 ところで上のナスの花の写真を見てください。前回のジャガイモの花とよく似ていますよね。同じナス科だというのも納得です。トマトもナス科ですね。花の色はほとんどが黄色でナスやジャガイモとは大違いですが、雌しべを取り囲んでいる雄しべの精悍さなどはよく似ています。

 ナスは日本の気候によく合っているらしく、ほとんど手間なしでどんどん実を付けますが、トマトはとてもデリケートな野菜で、気温や雨量の影響をストレートに受けます。そのあたりのバランスがちょっと崩れると病気になったり裂果したり。栄養豊富なせいか虫も大好きで害虫被害も多く、路地栽培でしかも無農薬で完熟トマトを生産するのは至難の業です。

 ただ、太陽の光をたくさん浴びて熟した路地物トマトの味は格別です。スーパーで売られているトマトはほとんどがハウス栽培ですが、直売所などで路地物を見つけたらぜひ味わってみてください。貴重です。

ジャガイモの花―花の咲く芋、咲かない芋―

 3月中旬に蒔いたジャガイモが5月に入って次々と花を咲かせています。葉は青々として、いかにも盛んに光合成を行っているぞ、という感じ。6月になると花も終わって、時折小さなトマトのような実を付けます。次第に葉も元気を失っていきます。その頃には地下には芋が大きく育っていて、そろそろ収穫時期となります。あとわずかです。

 ジャガイモが青々と成長している5月、同じ芋でもサトイモはようやく芽が地上に現れてきます。その芽力は相当なもので、固まった表面の土を押し上げ、少々の石が乗っていても平気で持ち上げます。

 ジャガイモもサトイモも芋の部分は地下茎で、その点、根が太ったサツマイモとは異なります。でもいずれも芋から芽が出て繁殖する点では共通です。

 芋から繁殖するということは、交配していないということで、つまりは自己複製の繰り返しということになります。品質が悪かったり、病気を持っていたりするとそれが複製され続けることになりますから、良い種芋を用意することが重要になってきます。

 ところで冒頭に記した通り、ジャガイモは花を咲かせ、時に実もつけますが、サトイモやサツマイモは滅多に花が咲きません。いつもどこかに一輪ぐらい花が咲いていないものか見ているのですが、今までお目にかかったことがありません。さあ今年はどうでしょうか。

アヤメの花

 3年ほど前でしょうか。畑の片隅に突如アヤメが出現しました。どこかから種が飛んできたのでしょうか。そのアヤメを掘り出して、野菜づくりに邪魔にならず、かと言って草に埋もれにくい所に移植しました。去年は細々と花を咲かせていましたが、今年は一気に群れ化しました。

 アヤメの花はとても不思議な形をしています。模様がついて垂れ下がっている花びらが外花被と呼ばれる花弁でこれが3枚あり、そそり立っている3枚の花びらは内花被と呼ばれる花弁です。その中間にやはり3枚の花びらのようなものがありますが、これはなんと雌しべの花柱だそうです。3枚に分かれていますが元の部分は一体になっているんだそうです。そのめしべの裏側に雄しべがあります。

花柱の裏側。花柱の先端が花頭、花柱に覆われるように雄しべがある。

 随分と凝ったつくりですよね。アヤメの花は横から見ても上から見ても独特の存在感と美しさがあります。畑に生える植物は十把一絡げで「雑草」と呼ばれてしまいますが、アヤメを雑草と呼ぶのは少々気が引ける。同じ植物なのに勝手なものです。

何の花でしょう?

この写真の花、何の花でしょうか?

ヒント
①野菜です。
②スーパーには必ずあります。
③焼き鳥屋でもおなじみです。
④蕎麦屋でもおなじみです。
⑤鍋料理には欠かせません。

 こんなにヒントがなくてもわかりますよね。正解は長ネギです。いわゆるネギ坊主です。小さな花の集合体で、一つの花を取り出してみるとこんな形になっています。

 さてこのネギという植物、従来の形態的な分類方法ではユリ科の植物とされていましたが、DNA解析による新しい分類法(APG体系)ではヒガンバナ科ネギ亜科に分類されています。タマネギ、ニンニク、ラッキョウなどもみな同じ仲間です。

 まあ小難しいことはさておき、このネギ坊主ですが、実は食べられます。花が開ききる前のつぼみ状態のものを天ぷらにすると結構おいしく、酒の肴にはピッタリです。

 冬の間、鍋の必需品として食卓を賑わせた長ネギも、4月ごろになるとトウ立ちしてネギ坊主ができてしまいます。そうなるともう固くてネギとしては食べられません。家庭菜園でネギを作っている方、もしネギ坊主ができてしまったら早めにつぼみを摘んで天ぷらで食してみてください。珍味ですよ。

 ネギ坊主を放っておけば当然種ができます。最近はF1品種が多いので要注意ですが、その種を蒔けば当然芽が出ます。また、ネギ坊主をちょん切ってしまったネギをそのままさらに放置しておくと、やがて分けつして再生します。多くの農家はネギ坊主を切り取った後、新たな場所に移植して再生産しています。我が農園ももちろんそうして再利用しています。

クロハネシロヒゲナガ

 畑で野菜の写真を撮っていたら、やたらと髭の長い変な虫を見つけました。とりあえず写真を撮って、あとで調べてみると、クロハネシロヒゲナガという昆虫だとわかりました。特段珍しい虫でもなく、結構あちこちで見かける虫のようです。その気になって探してみると、我が農場にもかなりいることがわかりましたが、今まで全然気づきませんでした。

 チョウ目(鱗翅目)ヒゲナガガ科の一種だそうです。ヒゲナガ蛾、つまり蛾の一種なんですね。もっともこのクロハネシロヒゲナガは最後の蛾の部分が省略されています。命名するときに付け忘れたのか、それともガガと連なると言いにくい、あるいは発音上美しくない、等々の理由があったのか、よくわかりません。

 写真で見たとおり髭が長いので、飛翔にはかなり制約を受けます。写真は草に止まっている時のものですが、飛んでいるときもほぼこれと同じ体勢で、体が立った状態でふわりふわりと飛んでいます。なんとも不思議な蛾です。

 そのくせ、なかなかじっとしていません。機敏に動き回る訳ではないのですが、小さい上に常にフワフワヒラヒラしているので、被写体としてはかなりの難物です。

 一見邪魔そうに見えるこの長い髭を、行動の制約を受けるというリスクをおかしてまで身につけたのも何か深い訳があるのでしょう。この髭、メスは短くてオスは長いことから、一説によるとメスのホルモンを嗅ぎ分けるために長くなったのではないかとのこと。進化の動機はやはり生殖にあるのですね。